深海魚

花びらに埋もれてこのまま 死んでもいいと思った

「アイドル」とは 魔法なのか呪いなのか

 

ジャニヲタ的に頭が痛くなるような色んなニュースが飛び込んできて、「アイドルを応援すること」について考えると虚無感を覚える今日この頃。

 

マスメディアは好き勝手に言うし、世間の声は怖いし、ファン同士でも色々あるし。

 

私が夢見ているアイドルってなんだろう、と考えてみたいと思ったのがこの記事を書いたきっかけです。

 

 

アイドルが持つ、人を惹きつける不思議な"魔力"をうまく言語化して、目の前の舞台で演じられた「俺節」の1シーンが未だに脳裏に焼き付いて離れない。

 

ーー5歳の頃からアイドルを夢見て、レコ大のステージまで駆け上った少女。しかし、それは一時の夢で、年齢とともに落ち目になり CMのスポンサー会社の社長に接待するシーン

 

社長のお金でヘアヌード写真を出すことが本当にやりたかった夢なのか、と主人公に問われ、

「綺麗な服着て、お化粧をしてもらって、満員の客席でちやほやされて、田舎の女の子が魔法をかけられて二十数年。時計の針が12時を廻ってもまだ輝いているためには、ヘアのひとつくらい出さないといけないわけ!」 

 

「本当に魔法なら、そんな必要ないでしょう!?」

 

「…じゃあ呪いだな、呪い」

 

いくつになってもスポットライトを浴びたいっていう、そんな呪いにかかっちゃったの

 

夢見る呪いだよ」

 

 

このシーンを見たとき「アイドル」という夢に惹きつけられるのは、決してファンだけではないのかもしれないということが頭を過ぎった。

スポットライトを浴びることで、少女が"アイドル"という魔法にかけられて、その魔法はやがて呪いにかわっていく。

「アイドル」という名の魔力は、ファンだけでなくアイドル本人にも有効なものなのかもしれない。

 

そして、この「俺節」のワンシーンが示すように、果たしてアイドルとは呪いなのだろうか。

 

一口に「アイドル」と言っても、現在その多様性は目を見張るもので、多くのアイドルたちがファンを獲得するために様々なスタイルを打ち出している。そして、 男性アイドル 女性アイドル、ソロやグループ…と形態も多岐にわたる。そのため、一般論としてアイドルを語ることは難しいが、時代が経っても連綿と続く「アイドル」の共通認識のようなものがあるように思う。

 

普通の芸能人とアイドルの決定的な違いは、「アイドル」の語源でもある "偶像性"の有無であると考える。

 

では、アイドルの持つ偶像性とは何なのか。

私は、ファンに夢を与える、魅力的な存在であると考える。

 

「アイドルは恋愛をしてはいけない」

個人的な賛否はさておいて、これは一般的な風潮である。 何故なら、アイドルの一要素として「疑似恋愛」的な部分も兼ね備えているからだ。アイドルは特定の人のものではなく、パブリックな存在でいなくてはいけない。「みんなのもの」じゃないといけない。事実、SMAP以降 男性アイドルが長く続く存在になった いまでも結婚は許容される一方で、結婚生活を赤裸々に語ることは何となくタブーにされることが多い。

また、アイドルグループであればグループ内のメンバーとの関係性に夢を見ることもある。

あくまでもお仕事であることは理解しているのだが、ファンという生きものは アイドルというプロジェクトを成し遂げる仲間以上に 例えば「幼なじみ」や「ライバル」といった関係性を見出したくなるのだ。

 

 

アイドルは《女優/俳優》《ダンサー》《歌手》《タレント》の何処にも属さない。

属さないかわりに、全部をやっても不思議ではないのだ。トランプでいうジョーカーのような存在なのではないかと思う。だけど、ちゃんとしたジョーカーになる為には、並大抵でない努力が必要とされる。アイドル以外の本業のプロがいるところに飛び込む訳だから、当然のように風当たりはキツいという。
しかしアイドルの持つ、人を惹きつける「魅力」というものは時に技術を上回る。だから、アイドルが必要とされる場面が生まれて来るのではないかと思う。

 

 

これらがアイドルをアイドルたらしめる要素、として私が勝手に考えたことだ。

そして、「アイドル」はファンに夢を与えながら、どこか危うい信頼の上に成り立っているのに、永遠さえも信じさせてくれる存在であることが不思議で仕方ない。


ファンの数だけ「アイドル」の定義があって、アイドル自身がそれぞれ持つアイドル像だってあるはず。

『アイドルとは何か』この問いに、正しい答えなんて存在しない。

 

ここ一年で、私の推し3人が病気や怪我で入院したり、好きなグループが活動休止をしたり、色々なニュースが飛び込んできたり…とヲタク人生で出来れば経験したくないことが次々と起こった。アイドルを応援していて楽しいことは勿論沢山あるが、辛いことも大いにある。それでも、アイドルを応援することを、辞めることができないのは何故だろう。

CDを手にすると、音楽を聴くと、テレビを観ると、現場にいくと、いつだって彼らはキラキラしていて、スッと引き込まれてしまう。

 

私たちがアイドルのキラキラした魔法に いつまでも夢見てしまうのは、一種の呪いなのかもしれない。