深海魚

花びらに埋もれてこのまま 死んでもいいと思った

ずっと"ともに"生きていくーKinKi Kids ThanKs 2 YOU

 

暗転した広いドームのなか、灯る赤と青のペンライト。大きなスクリーンに映し出される ツアータイトルの文字に、赤と青が螺旋を描く。高まる鼓動のなか、聴こえる神聖なピアノの旋律。待ちわびた、2年ぶりのKinKi Kidsのステージが幕を開けた。


KinKi Kidsのコンサートは、私にとって「特別」だ。堂本剛堂本光一として彼らは一年を通して沢山のステージに立っている。けれど、KinKi Kidsのコンサートは たったの4公演。

ほんとうは、本音を言うと、春でも夏でも秋でもふたりの姿を見たい。そうは言っても、KinKi Kidsに逢えるこの冬は、特別に心が踊るのだ。

開演前、会場の外では、コンサートを楽しみにドームへ向かうファンの姿。入場すると、30分、15分ごとにKinKi Kidsの楽曲に合わせて照明で彩られた噴水があがっていた。はじまる前から、期待がふくらんでいく。

 

 

1曲目は、「愛のかたまり」

2年ぶりのコンサートで、久しぶりに聴くことができる彼らの歌声。それがKinKi Kidsが合作した、彼らが大切にしている曲であるというのは、どんな言葉より伝わってくるものがある。KinKi Kidsはこの曲に、どこまでの物語を託していくのだろうか。魂が震えるように重くて、愛おしい音色だ。


ステージに立つふたりの出で立ちは、まるで異なっていた。王国の王子のような衣装で、長い裾をたなびかせて踊る光一さんと、「FUNK STAR」を具現化したようなエキセントリックな衣装でギターをかき鳴らす剛さん。

こんなにも違うのに、二人が同じステージに立つだけで、圧倒的にKinKi Kidsだった。

 


2曲目は、「The Red Light」

20周年のあの夏、ふたりで立てなかったステージ。そして、同じ年のあの冬、ふたりでステージに立つために選択した、全編オーケストラという構成上、歌えなかった曲。

ずっと聴きたかったけれど、この曲のパフォーマンスを聴けるのはもっと先だと思っていた。つよしさんの耳は、完治しておらず「後遺症」の状態とずっと付き合っていくしかない、と聞いていた。それはもう承知の上で、彼が無茶のない範囲で出来ること、そのエンターテインメントを楽しむことに決めていた。

でも、敢えてこの曲を2曲目に持ってきたというのは、「遠慮なくKinKi Kidsの音楽を楽しんでいいんだよ」というつよしさんからのメッセージのようで嬉しかった。


「Bonny Butterfly」〜「LOVE SICK」のメドレーもめちゃくちゃかっこよかった。

FUNKアレンジが効いたナンバーでつよしさんのギターが鳴き、光一さんが舞う。今まで彼らが完全にKinKi Kidsと隔離させていた、それぞれのソロワークで培われたエッセンスが、同じステージで繰り広げられていた。


トークになると、パフォーマンス時とは一転して、ゆるい空気感になるのも彼らの魅力。

「コンタクトを入れ忘れた」と、つよしさんがステージ上でコンタクトを入れ出す14日の東京公演。まだまだ喋り足りないと、時間が押してもなお次の話題へと行こうとする光一さんの姿が見られた15日の東京公演。中継もあり、巻き巻きで進める31日のカウントダウンコンサート。年のはじめよりも光一さんのお誕生日を祝う1日公演。めちゃくちゃ笑わせてもらいました。


「たよりにしてまっせ」からはじまるJr.当時に歌っていた曲やデビュー初期の曲メドレーもよかった。

「買物ブギー」をあんなにかっこよく踊れるのは、世界に堂本光一ただ一人だと思う。そして、今回つよしさんが書き下ろしたFUNK「KANZAI BOYA」。ジャニーさんへの愛を笑いに昇華する音楽は、まさに哀しみを音に変えるFUNKの本質そのものだった。

KinKi Kidsがひたすらにオモチャ(台詞を録音したサンプラー)で遊んでいる「ボーダーライン」。お互いの若き日の声をつかって遊んで、ふたりが笑い合う姿は"世界平和"と言う他なかった。


そこから怒涛の合作メドレー。

KinKi Kidsの楽曲提供された曲は、勿論名曲が揃っている。けれど、ふたりが自分自身の手で手がけた曲は、いちばん彼らの声質に合っているような気がする。つよしさんが光一さんに歌わせたい歌詞と、光一さんがつよしさんがどう歌うか想像して作った旋律。言葉を尽して語るよりも、ただただ「美しい」としか言いようがない世界がドームに乱反射していた。


2019年に亡くなられたジャニーさんを想って選曲された曲が多いという今回のセットリスト。本編中もふいに、ジャニーさんを想うような歌詞が出てくることがあった。そのとき彼らは、そっと想いを湛えたような表情をしていた。

ジャニーさんへの愛、それがきっといまのふたりを繋いでいるのだと感じられた。

 

 

アンコールで最期に歌われた「YOU...」

ジャニーズ伝説のためにつよしさんが書き下ろした曲の、歌詞違い。つよしさん曰く、ジャニーさんが亡くなって、彼が火を浴びた瞬間の、「あの日に生まれた僕たち2人の友情の物語」を描いた歌詞。

 

君が涙をはじめて見せてくれた

気づかないふり できなかった

どんな人にも悲しみが流れてる

背中を掌で撫でた


光一さんが、火葬場で つよしさんに見せた涙の描写からはじまるこの曲。ファンが一生知ることのできないような、KinKi Kidsの大切な部分を、そっと触れさせてくれたような気分だ。この二人は、これまでどんなに同じ景色を見て、同じ感情を分け合って生きてきたのだろう。想像すると、愛おしくて泣きたくなる。


元旦公演で、光一さんが言った「これからもジャニーさんとともに、そして剛くんとともに 生きていければいいなと改めてそう思っています」という言葉。

私は、いまの彼らがステージ上で発した、この言葉がすべてだと思う。

40歳をこえて、アイドルであり続けること。私たちが想像できるような、決して容易いことではないのだろう。

だけど、ふたりがKinKi Kidsとして在るということに前向きで、20周年を超えた いま、新しい表現が生まれること。それは奇跡のようなことだ。

その奇跡を、現実のものとして目の当たりにできることはなんて素敵なことなんだろう。

ふたりがともに生きる、これからの景色をずっと見ていたい。