深海魚

花びらに埋もれてこのまま 死んでもいいと思った

関ジャニ∞が歌う「夢」を辿ると何が見えますか

 

「夢」ーそれは、寝るときに見る"夢"。将来への希望や願い、実現したいものの象徴。

関ジャニ∞は、今まで数多くの楽曲で「夢」を歌ってきた。

今回は、関ジャニ∞が歌う「夢」の歌詞の変遷を追いながら 関ジャニ∞と"夢"について考えていきたい。

※様々な作詞家さまがつくられた歌詞を勝手に繋ぎ合わせて自己解釈しています。

※歌詞の全体像を考慮していません。

※編集の都合上、すべての歌から歌詞を抽出せずに選出したものから記事を構成しています。

 


<目次>

 

 

 

夢の夜明け(2004-2005)

 

いつも夢に 選ばれないまま 陽が登り 沈んでゆく 日々

夢にHeavenly Psycho 叫んだ声だけが空に響いた

「Heavenly Psycho」

 

夢見ることやめない 僕らの中のDREAMIN' BLOOD

さぁ行こう僕らには夢を叶える力がある

「DREAMIN' BLOOD」

 

夢に見た楽園に 手が届かないとしても

歩き続けている この足を信じて行くよ

夢に見た楽園にきっと辿り着けるから

絶え間なく漕ぎ出す あの船に乗って出かけよう

「旅人」

 

同じ夢見る度に 失くしてる気がした

「Eden」

 

My dreams reached for the sky

「Do you agree?」

 

 

多くのジャニーズJr.にとって、大きな"夢"であるデビューを掴み取った関ジャニ∞

そんなデビュー当初の彼らが歌う、"夢"の歌詞の一部を抽出してみた。

希望に満ち溢れた"夢"を描くのは「DREAMIN'BLOOD」、「Do you agree?」の英語詞。英語詞を直訳すると、"僕の夢は空まで届く"といった意味になる。なんとも若者らしい、前向きな歌詞だ。

しかしながら、それ以外の歌詞はすべて"夢"を打ち消すような言葉を伴っている。

全体として捉えると、デビューをしたばかりのアイドルグループが歌う歌詞としては、なんとも暗い印象を受ける。これらの歌詞について考える際、楽曲が披露されていたのがデビュー前の松竹座公演であることも考慮しなければならない。すなわち、これらは夢に辿り着けるかどうか分からない時期の関ジャニ∞にあてがわれた曲なのだ。

このデビュー当初の歌詞にある暗さというのは、決して後ろ向きな意味合いではない。

希望も持ちつつも、叶うかどうかわからない「夢」を抱く。「夢」そのものへの不安が色濃く表れているのだ。

 

 

 

描き始めた夢(2006)

 

夢に描いた世界はいつも思うより簡単じゃなくて

「無限大」

 

皆さん一緒に夢咲かせましょ

「桜援歌」

 

夢を語った君の名前も

思い出の目次と変わり

喜びや夢の カケラを集めている

あの日のままに

 「未来の向こうへ

 

同じ阿呆なら 夢見にゃ損損

F・T・O

 

 

デビュー直後に発表された楽曲と比較すると、ほんの少しだけ前向きな印象を受ける。相変わらず、「思うより簡単じゃない」などと 後ろ向きではあるものの、夢を否定するというよりかは、遠く叶わないと思っていた夢に少しずつ近づいていったからこそ、「困難」にぶつかっているような歌詞だと感じる。

それは、彼らがかつて抱いていた「夢」を叶え、デビューしてしばらく経った時間を示しているかのよう。

桜援歌は、「皆さん」へと投げかけながら、夢を「咲かせる」という表現が素敵。希望に満ち溢れていてめちゃくちゃ好き。

 

 

 

野望と強がりと(2007-2008)

 

このままじゃ夢さえ見れない

みんな沈没だ

Great Escape大脱走~」

 

今壊されそうで 夢見る理由さえ探してる

「旅の涯には」

 

夢 恋 山を越えて うまく行く!!

「強情にGo!」

 

引き裂いた夢から溢れ出たのは

どんな嘘だったろう

「BJ」

 

夢捨てんなよサムライブルー

揺るぎ無き夢だけが

溢れてる

サムライブルース」

 

いつかデッカイ夢掴みとるんだ

「ヨリミチ」

 

夢は無限大の無責任ヒーロー

無責任ヒーロー

 

 

 この時期の「夢」にまつわる歌詞は、大げさなまでに野望を抱くものが登場する。

一方で、未だに「夢」を探したり、"いつか掴み取る"とまだ「夢」が手元になかったりと、不安の色も伺える。

「BJ」の歌詞は、観念的だからこそ、それぞれがイメージする「引き裂いた夢」があるように思う。

夢を「引き裂く」という行為ができるといことは、一度は 形づくられた「夢」が存在したということ。そして、それを自らの手で失わせてしまったこと。いつか、8人で彼らが抱いた夢。いろいろなものを、勝手ながら重ね合せたくなるような歌詞である。

 

 

 

追憶の夢(2009)

 

キラキラ輝く 夢を抱き 旅してる

「ひとつのうた」

 

あの頃抱いていた夢

近づいてるの? 遠ざかってるの?

「パズル」

 

何千回も夢を見て 何千回も諦めて

それからだぜ 

何万回も夢を見て 何万回も諦めて

それからだぜ 

「ゴリゴリ」

 

たぶん夢にまで ひかれた頃のままに

今、浮き沈みながら どこまでも飛べるんだな

「情熱Party」

 

遠い夢を 眺めながら

熱く 語った想い

嘘じゃないだろう?

「咲いて生きよ」

 

 

「あの頃抱いていた夢」「遠い夢」「夢にまで ひかれた頃」と、かつての「夢」を思い返すような歌詞が登場する。

2009年、デビューして5年が経ったからこそ ただ夢を追いかけるだけではなく、夢を思い返すような歌詞も似合うようになったのではないだろうか。

「5周年」は、彼らにとって初めての節目でもある。デビューから夢に向かって、ひた走ってきた道のりを 一度立ち止まって眺めているような歌詞だと感じる。

 

 

 

色とりどりの夢(2010)

 

現実を目にして どんな気分だい?

甘えた夢ならSo long

「Jackhammer」

 

雲を掴もうと伸ばした手は あの日の少年の夢

「蒼写真」

 

あの日描いた夢はまだ この手の中にないけど

まだ終わらなくて 果てしなくて 道は続いてく

LIFE〜目の前の向こうへ〜

 

虹を 掴む みたいに デッカく 強い 夢を見る

「泣かないで僕のミュージック」

 

大事なもの いつのまにか 見失っても

思い描くこの夢の先を信じていたい いつか花咲く時まで

「願い」

 

夢は叶ったり 叶わなかったりする

「BOY」

 

 

楽曲が豊かになるにつれで、自分たちを投影した曲のみならず、映画や漫画、小説のように楽曲のなかの物語がバラエティ豊かになってゆく。その様子が「夢」という単語を歌詞から抽出するだけでも理解できる。

LIFEでは、「あの日描いた夢」と、前項に説明したような夢を思い返すような歌詞がありながらも、「まだ終わらなくて」「果てしなくて」と、さらに夢を追い求めていく姿が描かれている。

 

 

 

夢に触れる(2011-2012)

 

夢のように温もりだけは この手のなか忘れやしないんだ

イエローパンジーストリート

 

そうさひとりよがりの夢だけど 君は引き止めたりしないで

「虹色パラメータ」

 

夢にまで見ていた世界 具現化したのにこぼれない笑みすらも

途中下車した俺の目の前に

少年が両手いっぱいに夢や希望抱え込んで笑ってた

「wander」

 

夢も見ないまま終わりたかない

「Fly High」

 

気付けば僕は届かないものが

“夢”だと思っていたのさ
君と描いた淡い“夢”を

永遠と呼ぶから この願いは消えない

「Merry Go Round」

 

燃える心ひとつで 夢を追いかける

もう みなくなったの? あんな大きな君の夢

 「あおっぱな」

 

 

前項に引き続き、楽曲のバラエティが豊かになるにつれて 様々な文脈で「夢」が使用されている。

 この時期の「夢」の歌詞の特徴は、「夢」に具体性があること。それが現れている歌詞は下記の通り。

・「届かないものが”夢”だと思っていた」=いまは夢は届くものだと知っている

・「夢にまで見ていた世界」が「具現化」している

これらの歌詞の主人公となる人物が、「夢」とはどんなものであるのかを 既に知っているからこその歌詞だといえるだろう。

2011年の関ジャニ∞は、24時間テレビの初パーソナリティ、初の5大ドームツアーと飛躍の年だった。また、2012年は8周年のアニバーサリーイヤーとして、イベント等大いに盛り上がった。彼らの夢が少しずつ実現しようとしている様子と、歌詞がリンクしているようにも聞こえる。

 

 

 

ひたすら夢を追う(2013-2014)

 

夢追って 闘って 食いしばって my life

「myself」

 

夢見て描いてバカだって言われて

そこから始まるぜ!

「West Side」 

 

夢を掴むまで止まんじゃねえ!

夢を小さくまとめんじゃねぇ!

 

夢を掴もうぜ仲間で

 「キング オブ 男!」

 


目指した夢は 誰もが心に持ってる

「RAGE」

 

あの頃夢見ていたこんな世界 今目の前広がるこんなにも

まだ夢の途中 まだ夢の途中 見て見ぬ振りをしてたら置いてかれるから

 「ゆ」

 

夢はきっと きっと

優しさに気がついた その時に

大切な何かを教えてくれるだろう

「まだ見ぬ地図」

 

 

2009年頃にみられた「夢を見た自分を思い返す」フェーズは、もう見当たらない。ここにきて 再び、ひたすらに夢を追いかけるような歌詞が登場する。

過去から抱いてきた夢の世界からつづく道のりの中で、まだ辿りつきたいゴールはここにはないのだ、と言わんばかりの歌詞である。

止まることなく、未来の先にある「夢」を仲間とともに見ているのがこの時期の特徴だ。

 

 

 

夢への誇り(2015-2016)

 

そう肝心カナメのフレーズ そこに夢ある限り

僕は僕のままで夢を見続けてりゃいい

 「EXTEND!」

 

ふるえる程の 毎日をみせて 空回るだけじゃない夢

「ふりむくわけにはいかないぜ」

 

今夜もステージの上から夢の押し売りって?

「勝手に仕上がれ」

 

同じ街で見た同じ夢 笑いあった帰り道

「元気が出るSONG」

 

誰にも見れない夢をみて 燃えたぎるハートに賭けてみろ

「NOROSHI」

 

高らかに夢を明日へと掲げろ

「なぐりがきBEAT」

 

 

 

前項で説明した、ひたすらに夢を追いかけるような歌詞とは一転して、自らが「夢」そのものであるかのような歌詞が登場する。

主体(歌い手)が、観客(聞き手)に対して「今夜もステージの上から夢の押し売りって?」と問う歌詞は、特に顕著にそれがあらわれている。主体が「夢」そのもののような存在であるがために、ステージの上から「夢」を観客に押し売りすることが可能になるのだ。

また、「夢」とともに登場するフレーズも「見続ける」「高らかに」と肯定的なものが多い。「夢」に対してポジティブな印象を受ける。

(この頃は「同じ街で見た同じ夢」なんてフレーズも当たり前のように受け止めていたけど、いま改めて聴くと、ウッ…となりますね)

 

 

 

 

夢からの旅立ち(2017)

 

夢や希望なんて なくたっていい ただ一つだけ

「生きろ」

 

やんちゃな夢に はしゃぐばかりで 

じゃれあうように青春を生きてたね

「青春のすべて」

 

またあえたなら

うたいあかそう

ゆめからさめ

ただひたすら

「夢への帰り道」

 

いつまでも 此処に居たいけれども

旅立つ夢を 見てしまったことを

 

夢を見たから 胸の中から

手を伸ばし君の肩を叩くから


夢の中から 水の底から

手を伸ばし君の掌つないだ

 「今」

 

 

 「ジャム」に収録されている楽曲に登場する「夢」は、”旅立ち”や”過去にみた夢への決別”のなかに描かれている。メンバー全員が30代を迎え、20代のただ無邪気に夢を追いかけていた時代とは違う、「決断」を迫られる世代に突入したからであろうか。

ただ、奇しくもこれらの歌詞は、このアルバムを最後にグループを去る決断をした渋谷すばるさんの姿と痛いくらいに重なるのだ。

 そして、すばるさんが作詞した「生きろ」には、「夢」よりも重要なのは "自分自身を生きること" というメッセージが込められている。

このアルバムに収録されている「夢」の歌詞は、これまで彼らが歌ってきた「夢」と一線を画していると言えよう。

 

 

 


6人で見た夢(2018)

 

本当 本当 夢じゃなくて

終わらない旅を続けよう

「ここに」

 

夢じゃないんだ crystal

触れられる

「crystal」

 

ひとりきりで歩いていると 思い込んでいたのか夢の途中

「咲く、今」

 


渋谷すばるというメインボーカルを失った、6人の関ジャニ∞がリリースした曲のなかで描かれた「夢」を抽出してみた。すると、これらの三つの歌詞の中で、共通する2つの事項が見えてきた。

 
・「夢じゃない」という言葉

・”夢の途中”、”旅の途中”という道の半ばである表現


「夢じゃない」という 夢を否定する表現は、当時の現実を突きつけられた関ジャニ∞にリンクしていく。

これは、デビュー当初の歌詞にあった夢の否定とは歌詞が持つ意味合いとは少し違うように受け止められる。デビュー当初は、夢に手が届かなかったり、夢を失くすといったような歌詞。夢を抱くという行為に、消極的な印象を受ける。

しかし、「夢じゃない」というのは、一度 夢を見てしまったからこそ、その反対に存在する”現実”を知ってしまったというように受け止められる。

また、道の半ばであるような”夢の途中”といった表現は、関ジャニ∞が夢のゴールに辿り着いていないということを示しており、リスタートを切った彼らにふさわしい歌詞とも言える。

 

 

 

 

それでも描きたい夢(2019-)

 

夢見て 打ちのめされて また夢を見るんだ

「友よ」

 

夢を見て過ごした

思い描いた未来とは少し違っても

今まで過ごしてきた時間に嘘はない

 
夢を見て過ごした

あの時はもう戻らないけれど

今は今ですごくすごく幸せなんだよ

 
夢を見て過ごした

思い描いた未来とは少し違っても

手を繋いで歩いてきたこの道

 「My Story

 


6人体制となり、夢とは対照的な”現実”を突きつけられながらも、夢へのリスタートを切った関ジャニ∞には更なる困難が待ち受けていた。

5人になった関ジャニ∞が歌う「夢」はどのような様相なのだろう。

私が、「友よ」と「My Story」の歌詞を見て感じたのは、仲間と夢を見た過去を受け入れることと、それでも諦めたくない夢が描かれているということだ。

「友よ」の歌詞を見るとわかりやすいのだが、夢を見ていた過去と、夢を失うくらいに打ちのめされた現在と、それでも再び夢を見たいという未来への願望が、一行の歌詞に詰め込まれている。

「My Story」では、「夢を見て過ごした」過去があり、「思い描いた」のとは少し違う現在に自らがいること。過去に思い描いたはずの夢とは違っていても、過去を受け入れながら「今は今ですごく幸せ」なのだということ。

過去ー現在ー未来に抱く「夢」のすがたは それぞれに異なっている。
関ジャニ∞は、これまで見てきた「夢」を抱えて、夢とはいえない現実をみてもなお、また5人で新たな夢を描いてゆくのだ。

 

 

 

 

関ジャニ∞の歌詞を抽出してみると、それぞれの時期に応じて「夢」のもつ意味が変化しているように感じる。

(私が抽出した一部の歌詞を主観のみで、無理やり共通項を探しているというのは否めませんが…)

数多くの異なる作詞家が書いた歌詞なのに、楽曲の発表時期に伴う変化がみえたのは面白い発見だった。

 

 

これから関ジャニ∞は私たちにどんな夢をみせてくれるのだろう。

 

決して明るいだけじゃない。いつも順調でもない。

でも未来をあきらめない限り彼らは、きっと「夢」を歌い続けるのだろう。