深海魚

花びらに埋もれてこのまま 死んでもいいと思った

意志と意地のはざまで- Myojo 阿部亮平10000字インタビュー

 

「器用で、なんでもソツなくこなしてしまう人だなぁ」

わたしは阿部亮平さんのことを、そう思っていた。

 

確かに、踊りの柔軟性であったり、勉強でいうと文系の科目であったり、彼にとって不得意なものもあるかもしれないけれど、それを たゆまぬ努力で器用にみせられる人だ、と思っていた。

 

だけど、ほんとうは全然違っていたのかもしれない。

 

 

 


阿部亮平さんのMyojo 1万字インタビュー記事を読んだ。

彼は、メンバーの深澤辰哉さんと同じジャニーズJr.歴15年というキャリアを積んできた。

歴代からみても、デビューまでに、長い長い道のりを辿ってきた人である。

 

わたしは、デビューをきっかけにSnow ManのCDを購入して、彼らを追うようになったのでSnow Manの「いままで」も、阿部亮平さんの「いままで」も、深くは知ることができていない。

長年、彼を追いかけてこられた方々が見てきた景色を実際には見ることができていないから、わたしにはただ想像するしかできない。

だけど、彼が今回語った1万字の中には「いままで」に対する思いがたくさん詰まっているように思う。

それをテクストから感じられて。

阿部亮平というアイドルの「いままで」へ、思いを馳せるのだった。

 


阿部亮平さんが、今回インタビューで 言葉にしたのは「悔しさ」を原動力に変えるということ。


同期が華々しく活躍する姿、後輩のデビュー、そして何よりもできない自分自身への悔しさ。

悔しさをバネに、ひたすら自らを研鑚することで、いつか努力が花開く、その日を夢見ていた。

言葉にすると簡単になってしまうけれど、そんな簡単な言葉では済ましたくはないくらいの日々を悔しい思いをして、それでも前を向いて過ごされてきたのだろう。

 


驚かされたのは、マルチタスクが苦手だという言葉。

テキスト横のバイオグラフィー欄には、出演舞台とステージの日程がこれでもかと詰め込まれている。

コンサート・舞台の稽古や本番を掛け持ちして、学業もこなした、そんな彼がマルチタスクが苦手だというのはあまり想像がつかなかった。

バイオグラフィー欄に埋められた現場は、彼がただこなしてきた現場の数なんかじゃなくて、必死に足掻きながら過ごした日々の証でもある。

「なんでも簡単そうにできる」っていうのは、わたしが勝手に彼にかける期待。

そんな周囲からの、出来ることに対する無言の期待をこれまでも受けて、それでもなんとか踏ん張ってここまで来たのだと思うと、なんだか胸がぎゅっとする。

 

 

 

大学の受験、授業やテストで、それらのアイドル活動に穴を開けてしまうことに対しての葛藤は、わたしの想像以上に壮絶なものだった。


彼がジャニーズJr.だった頃。

仕事をして、いち社会人として見られているとはいえ、まだ若すぎる年齢。

周囲の理解が得られないことも、中途半端な自分自身にも、折り合いがつかない日もあっただろう。

メンバーに、ほんとうの意味での理解を求めるには、彼らも若すぎた。

そしてそれぞれが、その当時の"いま"に必死だったことも、想像にたやすい。

だからこそ、あの深澤さんの言葉は、救いだった。でも同期で同志だからこそ、その言葉が苦しくもあったんだろうな。

 

 

 

このインタビュー記事で多用されるのは「武器」という言葉。

自分自身の強みを理解し、その強みを芸能界という世界で闘うための「武器」にまで磨き上げる。

 


自分自身の強みとは何か?と、自分を客観的に見られるという感覚。

そして、強みから武器へと変えるために課す、自分自身への厳しさ。

 


「強み」「武器」というのは、就職活動の面接なんかにもよく使われる言葉だけれど、アイドル・阿部亮平に求められるのは、一般的な社会人に求められるハードルよりもずっと高いものだ。

 


多くの一般人から"見られる"職業であること。

それを自らのキャラクターとして芸能界で成り立たせていくには、「普通によくできる」では当たり前すぎて埋もれてしまうこと。

 

それを彼自身は、痛いほど理解しているはずだ。だからこそ、彼は「武器」を身につけるために、努力することをやめないのだろう。


そして、そんな彼が「阿部ちゃんは優しい」とメンバーから口々に語られていること。

自分自身に求める目標は高いのに、他人には優しくあれる。

そんな阿部亮平さんだから、わたしは好きになったのだと思う。

 

 

 

努力しても全部が報われるわけじゃないけれど、毎日努力をし続けていると、それが運良く巡り合う日もある。

 


アイドル・阿部亮平の輝きは強い意志と、意地ともいえる努力のうえで成立している。

わたしはその輝きに今日もまた、魅せられているのだ。